第 105 号
中岡慎太郎を探る
 10月14日、高知県にある中岡慎太郎館へ行きました。政経塾の勉強会などで、中岡慎太郎という名前が出てきたり、塾に慎太郎のポスター(?)があったりしたので、私は中岡慎太郎の存在を知る事が出来ました。坂本龍馬と同じ時代に活躍した人と聞いても、学校の教科書に出てきて勉強した記憶が全く無かったので(学生時代に勉強をさぼった為)、最初は“何の事やら?誰それ?”と思っていました。坂本龍馬についても、高知の人で、幕末に倒幕の為に動いて京都で亡くなった・・くらいの事しか知りませんでした。歴史の流れというものも、中学校で習って以来、抜け落ちてさっぱり分かりません。・・が、とりあえず、今回中岡慎太郎館にせっかく来たのだから、どんなことをした人で、どんな人だったのか・・と言う事くらいは理解しようという気持ちで館内を回りました。

 館内には映像やパネル、遺品などが沢山展示されていて、1つ1つ見ていくのにとても時間がかかりました。資料を見ていると、4才の頃から将来、大庄屋の職に就いて人の上に立つため、優れた人物になるよう厳しい教育を受け、読書を覚えたとか、7〜8才の頃には片道90分の道を四書を学ぶために毎日通ったとか、皆が躊躇する中で一人崖から川に飛び込んだとか・・本当に子供かよ!?みたいな行動が記されていて、非常に勇敢な少年だったことが分かりました。自分の同じ頃を思い浮かべると、絶対ありえない事だと思いました。私の4才頃なんて、漫画すら読めなかっただろうし、字だって読めたか定かではないし、7才の頃は小学校に勉強というより遊びに行っていたようなものだったし、とてもお気楽な子供時代でした。慎太郎が20才の頃には、土佐で大地震があったり、疫病が流行して、人々が困窮に苦しんだそうで、その時慎太郎は中岡家の山林や田畑を担保に近村の富豪から米や麦を借り入れて、人々に施したという話を読んで、20才の若さで他人の為にこんな事ができるって凄いわ・・と感心しました。また飢饉の時も、慎太郎は農民より下の身分であるにもかかわらず、すぐに城下に赴き貯蔵庫を開くように要請し、断られても門外で一日居座って翌日開かせる事ができた・・という話があり、恐れを知らない勇敢で機敏な行動力に衝撃を受けました。時代も違うので、比べても仕方ないかもしれないけれど、この頃の慎太郎と私の年齢が近いせいでついつい比べてしまいます。私の20才の頃は、自分のわがままな悩みでぐずぐず悩んで情けない様だったし、20才を越えた今でも自分の事で精一杯で、毎日楽しく平和に過ごせたらいいくらいの考えしかありません。20才の慎太郎と・・いや、子供の頃の慎太郎と同じ事をして下さいと言われたとしても、出来ないでしょう。
 歴史的な流れは資料を見ても良く分かりませんでしたが、当時、仲の悪かった長州藩と薩摩藩を組ませる事に成功していたりする事から慎太郎の頭の良さも伺えました。何故、深い溝のあった2つの藩を組ませたのか・・という事に関しては、「倒幕には連合が必要→古い攘夷論を唱えていては進歩しない→深く外国(外夷)と結びつき、提携して富国強兵策をとる事により、国家の独立が可能→この考えを持っているのは長州藩と薩摩藩・・他→既存している藩権力をそのまま使って倒幕の組織を作るのが最善→薩摩と長州を組ませる事で五卿問題、薩摩が以前尊攘派弾圧に加わった事への長州の怨念と言ったことを和解できるのでは?」という様々な考えがあった事がわかりました。慎太郎は人柄がとても良く、意見や立場の合わない人を結びつける力があったとも資料にあり、龍馬のように名前はあまり出て来ないけれど、偉人だったと言うことが本当に良くわかりました。
 今でも交通の便があまり良くない様な田舎の武士でもない人間が、どうして国を動かそうと考えたのかは、はっきり分かりませんでした。国への思いの強さや、素晴らしい行動力はどこから生まれたのでしょうか?次回、中岡慎太郎館へ来館した際には、今回分からなかった点を重点的に探りたいと思います。
 慎太郎の様に一本筋の通ったような考えを私は持っていないとつくづく実感しました。毎日平和で幸せならそれでいいし、愛国心とかあまり考えないし・・平和で何不自由ない時代だからこそ持てる考えだと思います。その考えが悪いなどとは思いませんが、慎太郎の生きた、今の様に物が豊富でなく、生活が不便だった時代を考えると、自分がいかに恵まれているかと言うことに気づきます。昔、国の為に人の為に命をかけて一生懸命生き抜いた人がいると言うことを知ると、自分も含め簡単に「死にたい」と考えてしまったり、人の命を奪ったりする事が起こる現代というのはおかしいと思います。辛くて嫌な事もあるけど、せっかくもらった人生を簡単に投げ捨ててしまう事は絶対にあってはいけない事であり、辛い事を越えて行ける強い心を持てるように自分自身で努力が必要であると改めて考えさせられました。
平成18年10月14日
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