第 129 号
九州訪問・「須永博士美術館」「心の小径」を訪れて
 2007年、夏も本番を迎えた7月の27日・28日の二日間、大和田塾頭、石川さんと桐内さん、そして私の4名で九州へ行ってきました。
 真夏の九州はもちろん暑かった・・・そして、遠かったです。

 今回九州を訪れたのは、今年2月に四国政経塾の活動を通し石川さんが立ち上げた潟eック仲通という会社のビジネスを兼ねた企業訪問と、詩人である須永博士氏を訪問すること、そして心の小径を散策することが目的でした。

 27日、塾を出発したのは朝7:00、車とフェリーでひたすら移動すること約10時間。初日の目的地である熊本市内に到着したのは夕方5:00頃でした。想像以上に遠い道程で、皆さんお疲れだったと思います。ご苦労様でした。

 熊本市内に到着して、潟Gコルドさんを訪れました。
 潟eック仲通は、主要事業の一環としてPLA(生分解性プラスチック原料)の分野でビジネスを展開しており、社長の石川さんと私の二人で企業訪問をしてきました。
 商談の詳しい内容等についての説明はこの場では控えさせて頂きますが、今後の課題についてやビジネスとしての可能性など、自分自身も潟eック仲通の一員として今後のPLA事業、また環境事業の可能性について色々と参考になりました。
 商談の後は、熊本市内で夕食を取り初日の日程を終えて休みました。

 二日目の28日、須永博士作品館のある熊本県・阿蘇郡小国町へ向かいました。
 今回、須永先生にお会いすることになったのは、大和田塾頭が兼ねてより須永先生の作品がお好きだということで、機会があればぜひ一度、先生にお会いしてみたいとの希望があり、今回の九州訪問の際に実現したというわけでした。
 恥ずかしながら私自身は須永先生について詳しくは知らず・・・大和田塾頭のお話で何度か耳にしたことがあった程度で、また、作品については塾の事務所内に飾られてある須永先生の作品をいくつか見たことがあるくらいでした。
 とはいえ、私自身も先生の作品にとても興味があり、今回お会い出来るという機会を楽しみにしていました。

 まず、最初に向かったのは須永博士作品館です。小さな町の細い路地の奥にある作品館で、昔の蔵を改装したのでしょうか・・・趣のある2階建ての日本家屋の中に、須永氏の作品が壁一面に展示されていました。当日は須永先生ご本人がサイン会をされていたこともあり、館内はすでに何人ものお客さんで賑わっていました。私は直接お話をするのは難しいだろうと思っていましたが、須永先生がお忙しい中で時間を割いてくださり、幸運なことにゆっくりとお話を聴く機会がありました。
 初めて須永先生にお会いした時、その風貌に「えっ・・・この人が?」と驚いたのが正直な第一印象です。
 先生の作品をご覧になったことのある方には分かると思うのですが、私が見たことのあった先生の作品は、丸い字体で書かれた詩に、蛍光色で可愛らしい感じのポップなイラストが描かれたものだったので・・・ついついイメージが先行してしまっていたのでしょう。その日の先生の風貌はというと、きれいに剃り上げられた頭と仕事着だとおっしゃっていた甚平のような和服。驚かずにはいられませんでした。
 そんなことを思っていると、先生は私たち4人を二階に案内してくださり、私たちが先生を囲むように座ると、突然に自身の体験談、詩人になるに至っての経緯や、作品一つ一つが出会いから生まれるといったこと、人として大切なことなど、自身の人生で経験したことを交えながら色々な話をしてくださいました。
 先生の言葉は一つ一つが自身の体験から紡ぎだされるのでしょう。お話を聴いていると、なぜか不思議なことに理由も分からず、涙が滲んできます。
 まるで、私たちが訪ねて来た理由や私たち一人ひとりが抱えている悩みや過去を知っているかのように黙々と語られている姿に胸が熱くなりました。

 お話を終えた先生は、思いついたように“アトリエを見せましよう”と自ら私たちを案内してくださいました。作品館には沢山のお客さんが見えられている中でのことで、正直少し戸惑いましたが思いついたら直ぐに行動するのが先生のライフスタイルというか、誰かの為に動き出す事にまったく迷いのない先生のお人柄なんだろうな・・・と感じ、最近は何かと動き出すことに迷いが尽きない自分自身と比べ、人の器の大きさとはこういうことを言うのだろうなと思いました。


 先生がご自身で案内してくださったアトリエは、小高い山の斜面に建てられていて、“秘密基地”を作ってみたかったとご本人がおしゃっていたように、言葉そのままが形になったような建物でした。そのアトリエの窓は特別製だということで、いくつかの窓枠を含め全てが壁に収納できる造りになっています。その大パノラマから見える景色は、まるで一枚の風景画のようで感動しました。なかなか部外者の人には公開されていないとのことでとても貴重な素晴らしい体験となりました。

 アトリエの見学を終えると、今度は須永博士美術館に案内して頂けました。ここは先生の原画や非売品の作品が多く展示されている場所で、美術館を管理されている佐藤誠司さんに色々と説明して頂きながら、詩だけでなく油絵などの作品も見せていただくことができました。

 美術館で作品を拝見した後、ぜひ先生に詩を書いて頂こうということで、もう一度作品館に戻りました。大和田塾頭、桐内さん、石川さんはそれぞれ、ご家族やご自身の為にオリジナルの詩を書いて頂いたようです。私はというと、先生の詩集の中から今の自分にあったものをひとつ選び、サインだけ頂こうと思っていたのですが、「日林貴範さん、人生負けるな」という自筆のコメントまで頂きました。先生は何も聞かずにただ黙ってこの一言を書いた後、笑顔で握手してくださいました。本当に心に響く一言でした。私が悩んだ末に選んだ詩は・・・内緒です。

 沢山の素晴らしい作品と心温まるお話で前に進む勇気をいただいて須永先生とお別れし、次に向かったのが「深田・心の小径」です。ここは臼杵の石仏の麓に作られた石碑群で、石碑の一つ一つには歴史の偉人が残した言葉を刻んでいます。四国政経塾の顧問でもある小野代議士にも所縁のある場所だということで、意気込んで拝見いたしました。
 歴史に残る名言には、やはり重みがあるもので、私自身の勉強不足もあり全てを理解するには至りませんでしたが、とても良い勉強になりました。

 心の小径を見学した後、帰りのフェリーまで時間があったので、臼杵の石仏群も見学して帰ることになりました。小学生の時に一度訪れたことがあり、軽い気持ちで訪れたのですが・・・大人になって来てみると、感じるものが違いました。
 気の遠くなるような昔、気の遠くなるような年月を掛けて彫り上げられたのであろう石仏には、信仰心のない私でも圧倒される雰囲気がありました。

        

 臼杵の石仏を見学したあとは、九州での全日程を終え、帰路につきました。
 暑い中でのハードなスケジュール、皆さん本当にお疲れ様でした。

 今回の旅で出会った須永博士先生と先生の暖かい作品の数々、歴代の偉人が残した言葉、再会を果たした臼杵の石仏群、私にとってはとても意味深い九州への旅となりました。
平成19年7月28日
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