第 132 号
南予・資料館巡り
 9月8日(土曜日)に南予方面まで歴史探訪の旅に行って来ました。今回の目的地は「宇和島市立伊達博物館」と「愛媛県立歴史資料博物館」です。高知出身の私にとって、南予と言えば海産物が美味しい自然の豊かなところといったイメージで、最近こそ仕事の関係もあって度々お邪魔する機会が出来ましたが・・・愛媛に6年も住んでいながらあまり良く知らない場所でもありました。そんな南予方面で資料館を巡るということで、目的である教養を深めるという目的はさておき、観光気分での出発となりました。

宇和島市立伊達博物館
 伊達と言えば、まず思い浮かぶのは伊達政宗。奥州・仙台藩、62万石を一代にして築き上げたとされる英雄で、“独眼竜政宗”の偉名は歴史事情に疎い私でも知っている有名な戦国武将です。目的地が伊達博物館だと知った時には、興味もあったので素直に喜びながらも・・・「ん?でも、政宗さんは奥州の戦国武将で博物館があるなら仙台が普通なんじゃぁ?ここ愛媛だし・・・。」と、ごく自然な疑問が浮かびましが、「多分、熱狂的な政宗ファンの方がいのかも。まぁ、行けば分かるでしょう♪」と勝手に安易な想像をして一人で納得することにしました。
 さて、小さな疑問を抱えつつ博物館に到着したのですが、そこで初めて気が付いたのは、この施設が「伊達政宗」の博物館ではなく、当時、伊予宇和島藩を納めた政宗の子孫「伊達家」にまつわる博物館だということです。今思えば、市立の博物館で「政宗が好きだから」なんて理由はないだろう!と自分の無知さに呆れます。
 伊予の伊達家にまつわる歴史的な背景を探求することは後にして、とりあえず館内の展示品を見て周る事にしました。まず驚いたのが、展示品の保存状態です。当時の武具や武器はもちろん、絢爛豪華な装飾品や生活家具の数々、現代では使い方すら想像出来ない生活用品など、当時のものとは思えないほどの美しい状態で展示されています。よくこれだけの品が残っていたものだと驚き、これらの文化遺産を現代まで継承されてきた方々の努力を思うと頭が下がります。ちょっと的外れな感想かもしれませんが、硝子越しにそれらの品々を見ていると、機械はもちろん、電気もコンピューターも無かった当時、芸術品とさえ言えるこれらの文化遺産を、まさに手作りで精巧に作った匠の技、当時の日本の伝統工芸に感動を覚えました。
 そんな伊達家ゆかりの品々に見惚れながら、館内を歩いていると「あ、そういえば何故に愛媛で伊達家なんだろう・・・」と当初の疑問を思い出し、謎を解き明かそうと館内にある家系図や展示品の説明などにも目を通したのですが・・・正直な意見を言うと、イマイチ分かり辛かったと思います。あくまで博物館なので展示品が中心だとは思いますが、歴史的背景の分かる資料があれば、展示されている素晴らしい品々の意味をもう少し深く感じ取れるのではないかと思いました。

愛媛県立歴史文化資料館
 “県立”“歴史”“文化”・・・建物の名前を聞いた限りでは、かなり真面目な場所なのだろうと、頭を勉強モードに切り替えて訪れた愛媛県立歴史文化資料館。
 到着してみると、想像とは裏腹にとてもお洒落というか現代的で、そして大規模な施設でした。館内では、石器時代から現代に至るまでの愛媛の歴史を、時代を追ってブースごとに展示しています。当時の歴史的な文化遺産の展示はもちろん、それぞれの時代の生活様式や町並みなどを再現するなどしていて、ちょっとしたタイムスリップ感覚が味わえる造りになっています。資料を読んで学ぶというよりは、時代を体験して学ぶといったスタイルの資料館といった感じでしょうか。
 愛媛県の成り立ちを紹介している資料や、県内の歴史的偉人を紹介したブース、文化的な資料として新居浜祭りの太鼓台をはじめ、愛媛県内の有名な地方祭に使われる神輿や宇和島の牛鬼なども本物が展示されているブースなど、県内はもちろん県外の人々にも十分楽しめるだけの要素があったと思います。
 私自身も、愛媛県に住んでいながら知らなかった愛媛の成り立ちを知ることが出来たし、現代に至るまでの歴史の流れを体感出来てとても勉強になりました。
 ただ、これだけ大規模な施設なのに・・・館内に人はまばらで、ほとんど貸しきり状態。ちょっと寂しい気がしました。これだけの施設でありながら来館者の少ないのは、立地条件のせいなのかPR不足なのか、その理由を確かめる術はありませんし、県政上の理由があるのだとは思いますが、「もったいない」の一言です。

 今回の南予・資料館巡り、個人的にはとても充実した一日を過ごせました。塾での偉人館巡りや資料館巡りなどの活動を通して毎回思うのですが、一人ではなかなか足を運ばないこれらの施設、実際に訪れてみると過去の事実を知ることで知識も得られ、歴史や文化に触れることで感性を磨くことも出来き、かなり学べることが多いと思います。分自身も含めて歴史や文化への興味が薄れている現代の若い世代の人々が、もう少し自分達のルーツや、先人たちの足跡に関心を持つことが必要な気がします。
平成19年9月8日
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