第 145 号
希望の島フォーラム
「〜ボクらの地域の未来はボクらが創る〜」
 平成20年2月16日(土)に「財団法人松下政経塾」と「えひめ地域づくり研究会議」の両主催により、上島町弓削島にある「せとうち交流館」を会場として、希望の島フォーラム「〜ボクらの地域の未来はボクらが創る〜」が開催されました。

 このフォーラムは松下政経塾26期生である兼頭一司さんの卒塾にあたる活動発表であり、3年間に及ぶ活動の集大成でもありました。兼頭一司さんより私共四国政経塾の大和田塾頭にご案内を頂き、事務局スタッフ等4名で参加させて頂きました。兼頭さんは愛媛県西条市丹原町のご出身なのですが、なぜ上島町を活動拠点に選択したのか?!このフォーラムに当たり塾内でも色々話し合っておりました。地域おこしや街づくりに何処が良くて何処が悪いと言うことはないと思いますが、奥さんとお子さんを一緒に連れて見知らぬ土地で事業を起こすことは、本当に大変なことではないかと思ったのです。ご家族の理解もないとなかなか踏み切れないと思うのですが、兼頭さんの熱意は勿論のこと、上島町に兼頭さん一家を優しく受け入れてくれる、島ならではの人情もあったのだろう?!等と勝手な想像を巡らせながら会場へと向かいました。

 フォーラムの開催に当たって「松下政経塾」古山塾長より開会のご挨拶がありました。古山塾長からは松下政経塾の設立趣旨や役割、活動の主な内容等が説明されました。現在、松下政経塾の卒塾生には国会議員30名・知事2名・市長及び地方議員が約70名程いらっしゃり、日本の将来を案じた設立者の松下幸之助塾主の志を受け継いだ人達が、現在も政界で沢山活躍されているとのお話でした。同じく主催者である「えひめ地域政策研究センター」の丹羽常務理事よりご挨拶があり「日本にある島々は日本の縮図である。」とのお話があり、高齢・少子化や経済低下の先端を行くのが今の島ですが、島が元気になれば日本も元気になるというプラス思考で、島が日本の未来を開くのだというお話があり、このフォーラムに賭ける意気込みを感じました。

 基調講演では東京大学大学院経済学研究科教授である神野直彦先生より「地域と人間の回復」というテーマでご講演がありました。神野先生からはヨーロッパのスウェーデンと日本を比較し、地域や産業に対する考え方の違いを非常に分かりやすく教えて頂きました。中でも印象的だったのが、イースタリンの逆説で「ある一定の水準を超えると豊かさと幸福が一致しなくなる」というお話でした。豊かさとは所有する欲求で、幸福とは存在する欲求であります。お金に例えると、お金を持つことが一定の水準を満たした時、お金がある豊かさが必ずしも幸福とはなり得ないということです。現代の日本社会が正にこの状態であり、存在を犠牲にした工業社会、つまり人間として幸福になることを犠牲にし、所有することを満たしてきた社会を築いた結果、いまは存在欲求を満たす社会、つまり豊かさと違う人間として幸福になることを求める社会に変わっているということです。キューバの発展においては、ロシアの経済破綻により原油の輸入がストップし、経済的に閉鎖された社会が逆に地域を見直すきっかけとなり、結果的には経済発展を果たした例をあげられ、実はこれまで発展しなかった所が、これから発展するのだと教えられました。中国では携帯電話の普及率が日本より遥かに進んでいますが、これは広い国土に電線を引くより電波を飛ばす方が経費が安く出来るからで、不便であったがゆえに進展した一例です。小さなコミュニティでいえば、地域のなかでこれまで不便だったり人が少ない所等ほど、未来の新しい社会をつくる使命とチャンスがあると言うのです。私などのように過疎の山間に暮らす者にとっては、大変自信につながるお話でありました。私ども四国政経塾でも現在「山間地域が癒しの空間としての人間再生の大きな役割を果たすことが出来るのでは?!」と地道に取り組みをスタートさせておりましたところでしたので、なおさら心強いお話で随分と勇気を頂いたように思います。

 次に地域づくり養成プログラムとして、夕日をテーマに街づくりをされている伊予市双海町の夕日亭大根心(ゆうひていだいこんしん)こと本名 若松進一さんよる落語ならぬ落伍が行われました。私は以前にも若松先生のご講演は何度か聴いたことがありました。当時は双海町観光課の課長さんであったと思いますが、公務員とは思えぬ木製カバンを持ち歩き「木になるカバン」と称す奇抜な発想と行動力が印象的でした。現在は定年を向かえご講演を中心に全国を行脚していらっしゃるそうです。これまで活動されてきた街づくりを落伍家としてユーモラスにお話くださいました。夕日をテーマに取り組んだ成果として、地域の子供たちが日本一夕日のきれいな双海町の出身であることに誇りを持てるようになったことが、本当にうれしいと語っておりました。経済も確かに大切ですが、故郷を思う気持ちも本当に大切だと思います。
 活動レポートとして主役の兼頭さんの報告が始まりました。なんと彼も落語家の衣装で囃子に乗って登場しました。岩手県から沖縄県まで色々全国を回りながら、この上島町にかける兼頭さんの夢を語られました。上島町は人口8千人ほどで、145億円もの借金を抱えておりますが、地域が元気になれば日本も元気になる!上島町のマネをすれば日本も変わると言われるようになることを夢見て、この上島町に移住し地域づくりをスタートされます。

 休憩を挟み、トークセッションがはじまりました。「ぼくらの考える島の未来」と題して、アンケート調査結果や地元の小・中・高校生が実際に街を調査した報告等が行われました。島に住みたいかどうかというアンケートでは意見が半々に分かれたそうですが、アドバイザーとして講演をされた先生方から、一度地元を離れることで地元の良さを改めて実感することも出来るとのご指導もありました。「良いコミュニティの中にいても、一度外に出てみることも大切である」と。いずれにしても故郷を思う気持ちが大切で、今回の発表をされた学生の皆さんを見る限りでは、本当に地域の方々の愛情を一杯に受けて純粋に成長されている様子を伺い知ることが出来ました。

 その後の交流会にも参加させていただき、地元の海産物などの手料理は、お店の料理とはまた違った人の温もりがあり、大変美味しく頂かせていただきました。ご馳走様でした。

 今回のフォーラムでは、自分自身の住む地域とかぶる部分も多く、これからの塾活動や事業展開にも大変参考になりました。兼頭さんとは帰りのフェリーの時間もあり、ゆっくりとお話することが出来ず心残りではありましたが、同じ愛媛県で活躍する仲間として、これからも切磋琢磨して行きたいと思います。日本は混迷の時代に突入しておりますが、今こそ人としての本当の幸福を追求することが求められていると思います。ゆえに私共四国政経塾の必要性もまた重要であると思いました。時代の流れのなかで変化することは必要ですが、根本にある人として大切なものを見直さなければならない時代なのです。自分の使命を今一度振り返り、新たな一歩を踏み出そうとフォーラムを通じて勉強することが出来ました。

 兼頭さんには今回のフォーラムの盛会をお喜び申し上げ、今後の益々のご活躍をご期待申し上げます。またお世話になりましたスタッフの皆様にも厚く感謝申し上げます。有り難うございました。
平成20年2月16日
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