第 83 号
食と平和
 今、テレビや雑誌などでも頻繁に取り上げられている食事療法、マクロビオティック食。ギリシャ語では「偉大なる生命」を意味するらしく、アメリカでは5人に1人はマクロビオティックという言葉を知っているほどで、クリントン元大統領や、マドンナなどを含む200万人以上がその食事療法を実践しており、私の好きなジョン・レノンも日々の食事に取り入れていたそうです。

 今回御縁あって、3/10() 島根県松江市のくにびきメッセにて開催された『平和環境健康特別区』申請、特別シンポジウムに参加させて頂き、幸運にもマクロビオティックの権威である久司道夫先生 ()の講演「食を通じて世界平和」を聴くことができました。先生が啓蒙、普及されているマクロビオティックとは、全粒穀物と季節毎にとれる食べ物に基づく食事療法で、先生曰く「人類の平和にはバランスのとれた食事が必要である。」らしく、確かに人間は食べる事なくしては生きて行けず、私たちは食物と環境からなっていると言っても過言ではありません。詳しい内容は、先生の著書等を読まれるのが一番なのでここでは割愛させて頂き、ここでは私が今回の講演を聴いて素人ながらに感じたことを有りの儘に書きたいと思います。
 私たちが「食べ物」に関して健康や平和と言うレベルで語れるのは、衣食が足っているからで、それは幸せな事です。この地球上では様々な原因による貧困や飢餓のため、命を落とす人々が多数いる事は皆さんも御存知でしょう。私が数年前に読んだ『世界がもし100人の村だったら・・・』と言う絵本。内容は「地球の人口63億人を100人の村に例えると・・・」と言った物ですが、その中の印象に残った部分を抜粋します。

 『村人に住む人々の100人のうち20人は栄養が十分でなく、1人は死にそうなほどです。
  でも15人は太り過ぎです。』


 『100人のうち75人は食べ物の蓄えがあり雨露をしのぐ所があります。
  でもあとの25人はそうではありません。また、100人のうち17人はきれいで安全な水を飲めません。』


 『村人に住む人々の100人のうち20人が空爆や襲撃、地雷による殺戮や武装集団のレイプや拉致に
  怯えています。』


 バラエティー番組では食べ物を笑いの道具や玩具の様に扱い、スーパーやコンビニでは日々売れ残りの弁当が廃棄処分されている、そんな日本ではよほどの事が無い限り飢え死にすること等ありません。しかし、豊かで平和なこの国では刹那的で自己中心的な事件が後を絶たず、まるで体も心も栄養過多でブヨブヨになり、心身のバランスを崩した無い物ねだりの餓鬼の王国のようです。そんな私たちはまず「毎日食事できること」に感謝する心を持つべきではないでしょうか。動物性、植物性いずれにしても「自然からの恵み」を得て人間は生かされおり、その事を意識して初めてバランスの取れた食事も効果があるのだと思います。年齢を重ねると、食事の前後に手を合わせ「いただきます」や「ごちそうさま」と言い辛くなるものですが、そうやって様々な事に感謝する心こそが平和の根源だと思います。

 今回の講演を聴くまで「マクロビオティック食」がどんな物なのかよく知らなかった私ですが、先生が今まで研究された興味深いデータと、ジョークを交えてのテンポ良いお話により『食』についてこんなにも考えることができ、意義ある時間を過ごせたことに感謝いたします。有難う御座いました。

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久司道夫 氏
1926年、和歌山県生まれ。東京帝国大学法学部卒業後、同大学院で国際政治学を専攻。
世界連邦主義者の桜沢如一氏らの影響を受け、49年に渡米。コロンビア大学大学院政治学部で世界平和の道を探究。
人類の平和にはバランスのとれた健康食、つまりマクロビオティック食が必要であると悟り、世界的規模でその啓蒙・普及活動に取り組む。アメリカの食生活、代替医療、健康法に多大な影響を与え、アメリカの歴史に大きな潮流を作ったと評価され、その優れた出版物や資料が日本人として初めてスミソニアン博物館に永久保存された。
 ボストン在住。
平成18年3月10・11日
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