韓国機会の学塾とのカンボジア研修に参加して
 韓国にある姉妹塾「機会の学塾」が3年ほど前から実施しているNGO活動にカンボジアの学校等の建設支援をするボランティア活動があります。今回「機会の学塾」との交流事業の一環として平成22年4月16日〜21日にかけて、活動企画に合同参加するためカンボジアへと向かいました。
 関西国際空港からの出発便もあるようですが、あいにくチケットが取れず、初日は昼に事務所を出発し高松空港から羽田空港へ向かい、羽田から成田空港近くのホテルに夕方5時頃到着し一泊しました。

 17日の翌朝、成田空港からベトナムのハノイ空港へ飛び、ハノイからカンボジアのシェムリアップへ移動しました。成田から現地カンボジアまでの移動時間は実に約12時間(待ち時間も含)国内移動と飛行機の乗り継ぎで移動は思った以上に大変でした。シェムリアップ空港に着いたのが夜9時頃で、空港にはカンボジアでピースカフェを運営されているオーストラリア人女性とゲストハウス(宿泊先)のミニバスが迎えに来てくださいました。日本と違い気候はとても蒸し暑く、シャワーを浴びて休憩後、韓国ご一行を出迎えたのが午後0時でした。韓国の皆さんも沢山の物資を持っての移動でしたので大変だったと思います。

 18日の朝はピースカフェでベジタリアンファーストフードを頂き、車で約1時間半程郊外へと移動し、ベンメリア村にあるハーモニー・ファームへと向かいました。※ハーモニ
ー・ファームとは・・・
クメール人が管理するベンミリア寺向かいにあるNGOで、孤児院(恵まれない、家のない、親のいない子供たちが住む)の運営、教育センター(ベンメリア村やその地方に住む子供のための無料教室)の運営、有機農場(生活維持をするためにフルーツ、野菜、お肉を農場で栽培)の運営を行っている組織です。移動するバスの車窓からは、広大な畑が広がっていますが作物は何一つ無く、日陰で涼をとる人々の姿が目に着きました。この時期には水は干上がり作物も出来ないのでしょう。またこの暑さでは中々労働意欲も出ないもの無理は無いかも知れません。そんなことを思いながら現地へと向かいました。現地では、機会の学塾から沢山のボランティア物資(野菜の種や日用品)と寄付金が贈られ、当塾からも寄付金を贈呈させていただきました。昼食をご準備いただき子供たちと一緒に御馳走になり、決して豪華な食事とは言えないかも知れませんが、精一杯のおもてなしに感謝し大変美味しく頂きました。昼食を終えて、いま建設中の新しい教室へと向かい、そこで土壁を付ける作業を一緒に行いました。作業自体は約2時間程でしたが、何といっても現地の暑さに参りました。この地で作業することの過酷さも少しばかりではありますが体験することが出来ました。
 作業を終えて一旦シェムリアップ市内へと戻り、夕刻にボランティアセンターを運営しているマイケル氏を訪問し、活動内容のご説明を受けました。ここではカンボジアヘボランティア活動支援をしたい人達へ、活動先の紹介や調整などを行っているそうです。英語での説明と韓国語での通訳でしたので、残念ながら十分な内容までは理解できませんでしたが、パンフレットの表書きには「helping you to help・・・find out what you can do」と書かれており、直訳すると「あなたが、あなたがすることが出来ることが、解るのを手伝うのを援助すること」となります。カンボジアへの旅行者への協力も呼び掛ける等の活動もされていて、ボランティアの拠点となっているところのようでした。

 3日目の19日は、ショムリアップ市内にある、親に問題(アルコールや犯罪など)がある子供を預かり教育している施設を見学しました。GREEN GEKOという名前のスクールでオーストラリア人が個人的に運営をしているそうです。スタ
ッフは20名で生徒は70名程いるとのことでした。施設も充実していてカンボジアでは随分立派な施設のように思えました。親に問題があるとは思えないほど無邪気な子供たちの笑顔が実に印象的でした。
 次に向かったのが水をろ過して飲料水を確保するためのフ
ィルターを製造している工場です。構造は至ってシンプルで
型枠にセメントを流し込み型を取り、その中に砂利を敷き詰めていき、その砂利の層を3段階で細かくしていき水をろ過する装置でした。製造も機械化されているわけではなく、全て手作りで行われています。これをロウコスト(US40ドル・約3800円)で製造販売し、学校等の施設に導入しているとのことでした。カンボジアの水事情は本当に厳しく、川の水も泥水で直接飲むことは出来ません。ろ過をした水も日本人からみると決して衛生的で安全性が高いとは言い難いものでした。しかし、それでも池の水を直接ペットボトルに入れて飲む子ども達の様子を見ると、このフィルターが如何に貴重なものであるかは容易に想像出来ました。ロウコストとはいえ、カンボジアの平均月収が約US40ドル程と聞いておりましたので、決して安い買い物ではありません。この装置を普及させることで少しでも安全な飲料水を確保することが、この企業の目指すところで今後の活躍を大いに期待したいと思いました。

 午後からはタラ川を下り水上生活をしている地域へと向かい、これまで以上に厳しい生活環境を目の当たりにしました。船上で夕食を頂きましたが、船で物乞いをする家族や水上に浮かぶ家屋などを見ると、今までの世界観や生活観が一変します。それでも逞しく生きている現地の人々の姿に、いかに自分たちの生活や環境が恵まれているかを痛感に感じさせられ、自分自身もこれまで以上に頑張らなければという気持と同時に、今の環境や周りの人々にもっと感謝しなくてはならいないと感じさせられました。

        

 4日目(20日)は世界遺産にも登録されている有名なアンコールワット観光です。朝日を背にしたアンコールワットを見るために、朝5時にゲストハウスを出発しました。早起きは苦手なもので朝が早く大変でしたが、早起きは三文の徳と諺にもありますが、アンコールワットに上る朝日は本当に早起きをする価値のある勇壮な物でした。時間が経つにつれ気温も上がり、汗だくになりながらアンコールワットを見て回りました。実際に見るアンコールワットの壮大さに圧倒されるばかりで、こんな大きな石をどうやって積み重ねたのだろうか?建設に30年以上を要したこの壮大な建造物に、当時の王の偉大さを感じました。

 こうしてカンボジア研修も無事終了し、アッという間の四日間の研修を終えました。今回の研修で今まで知らなかった新しい世界を見ることができ、この企画を準備下さった機会の学塾の皆様には本当に感謝申し上げます。日常生活の中ではカンボジアへ行こうと思う機会も無いですが、今回の研修でカンボジアに対する深い関心が湧き上がりました。カンボジアのストリートチルドレンや郊外にあるスクールなど、普通の旅行では見ることのできない世界を実際にこの目で見て、なんと日本は恵まれた国だろうと深く感じさせられ、当たり前のように思うこと(水・環境・教育等)がこんなにも有難いことなんだと痛感した次第です。カンボジアは経済的にもまだまだ決して恵まれていない国ですが貧しくとも子供たちの目は澄んで輝いており小さな子供までもが必死で稼ごうとする姿に、今の日本にはない別なパワーを感じました。

 経済発展を果たした日本の行く末を思う時、異国の国の状況を目のあたりにして感じることは、苦労や貧困の経験のない者が、はたしてカンボジアでの生活が送れるだろうか?!生きるために、人に物乞いができるだろうか?!今の日本の子供や若者にカンボジアのように生きていけるパワーがあるだろうか?日本が経済破綻し、いずれ今のカンボジアのようになった時、はたして心豊かな生活を送れるのだろうか?!カンボジア自体がグローバル経済の波に呑まれ、一部の資産家に資産を握られ、貧困の格差に政治不安を招くのでは?!等々…いろんなことを考えさせられた研修でした。
 私達にとっても経費的に決して頻繁に行ける程近くて便利な国ではありませんが、現地へ出向かなくとも何かしらお手伝い出来ることがあるのでは?機会の学塾の皆様程の支援は出来なくても、個人的なレベルでも十分支援できることがあるのでは?何かしら先進国の国民として果たすべき役割があるように思います。そしてその支援は、優越感から来る可哀そうと思う間違った支援ではなく、カンボジアの人々が自ら立ち上がるための支援であり、現地の子供たちの笑顔に明るい未来があるための支援で無くてはなりません。そしてカンボジアだけでなく、こうした地域は世界各地にあることを知り、NGO活動の意義と重要性を再認識し、自分自身の出来ることをもう一度考え直すことが重要であることを学ぶことができた大変貴重な体験研修でした。

 この研修でお世話になった全ての方に感謝申し上げます。
平成22年4月21日
目次へ