チャリティー・ビアパーティー報告書

 2002年7月下旬、釜山市内のとあるカフェにて、機会の学塾同窓会主催チャリティー・ビアパーティーが催された。パーティーは午前10時頃より始まり、その日の夜遅くまで、終日、来場客でにぎわった。


 ところで、今回の主催者となった同窓会についてであるが、これは、機会の学塾の卒塾生約200名程で構成される、学塾とは一種独立した組織であり、その目的は、学塾で身につけたであろう『知識』や『教養』、また『社会福祉の精神』や『他者を先導する精神』等を以って、広く内外に向けて飛び立とうというものである。つまり、卒塾という行為を以って『ゴール』とは考えず、『スタート』であり『門出』だと考えるところであろう。

本題だが、当日、私は会場の席で、今回のビアパーティーの主催者代表である、機会の学塾同窓会の安終栄会長にインタビューを試みた。氏は快く承諾してくださり、パーティーが進行する中、会場の一郭で話を伺った。以下にそれを掲載する。

 塾生  「最近は日本においても、このような民間での催し物が増えてきているようです。そのような中、それぞれにその目的はあろうかと思われますが、機会の学塾同窓会において、今回のような催し物をするにあたっての目的とは何なのでしょうか。」

 安会長 「まず第一に、チャリティーという部分があります。普通、企業は利益をあげる為に様々な活動をします。この点はチャリティーと言えども同じようなものなのですが、企業は利益そのものを目的、例えば株式会社なら配当金を生み出すことを最大の目的としますが、チャリティーの場合は利益、株式会社で言うところの配当金を生み出すことのみを目的とせず、さらに、利益の用途をその目的とします。今回の場合、あがった利益は募金というかたちで、世の中の為になると思われる諸々の団体に寄付させていただきます。」

 「第二に、皆を取り持つ媒体という部分があります。もともと我々は、機会の学塾の塾生としての半年間の研修を終えた者たち(第1期生から第9期生)なのですが、世間によくありがちなこととして、修了を以って完結ということがあります。例えば学業でありますが、よい学校を卒業した時、それを単にステータスとしてしか考えず、その中で学んだことをつい忘れがちな場合があります。また、一緒に学んだ者たち同士も、卒業ということで別れてしまう場合もあります。私たちにしても、それは考えられることで、卒塾を以って終わりというのでは悲しいと思わざるをえないのです。そういうことから、卒塾生で構成する機会の学塾同窓会を作り、定期的にイベントを催す中で、同窓会が皆を取り持つ媒体となれば良いと思うのです。」

 「第三に、具体的活動への第一歩という部分があります。我々は機会の学塾生として、半年間の研修を終えた者たちであると先に申し上げましたが、そもそもの学塾の理念とは、人を助ける機会を作ろうというものです。我々卒塾生も元をただせば、学塾に機会を与えられた者だということでして、そのような我々だからこそ、卒塾後の責任は重く、広く世の中に対して、機会の創出ということをしなければならないのです。その先駈けとしてのチャリティー・ビアパーティーなのです。」


塾生  「今回、チャリティー・ビアパーティーを催すにあたっての経緯を教えていただけないでしょうか。」

 安会長 「同窓会には幹部会があります。全ての同窓会活動は、この幹部会によって管理運営されるわけですが、過去、今回のような大きなイベントは2回催しまして、今回は3回目にあたります。今後とも、少なくとも年に一回は催し物をする予定でおります。さて、今回ですが、3ヶ月ほど前に、“こういうことをやろう“というような話題が幹部会で発案され、そして、それを可能にするための準備委員会を同窓会内に設置しました。その後は全てを準備委員会が進めていき、今日を迎えたわけですが、その中には様々な苦労がありました。」

 「第一に来客数です。いくら良いことをしようと思っても、それが大きくなればなるほど、費用は大きくかかります。それらをふまえた上で、今回は一日を通じて、のべ1000人という希望来客数を設定しました。そして、その内の500人を前売り券(パー券)とし、残りの500人を当日券(一般客)としました。前売り券については、卒塾生全員が一丸となって販売することにして、当日の一般客については、主に関係者からの口コミや、インターネットを介しての宣伝に頼ることにしました。今日、来客数がどうなるのかは、神のみぞ知るですね。」

 「第2に場所です。希望来客数が1000と決まったわけですから、当然、それに見合うだけの広さがある会場が必要でしょうし、また、採算ラインも忘れてはいけません。それらをふまえた上で、準備委員が場所探しをしたわけですが、これには非常に頭を悩まされました。捜す中、いくつか場所は、あることはあったのですが、それらには値段が合わないという、避けては通れないであろう大きな問題があったのです。今回はチャリティーを目的としている以上、赤字はありえませんし、パーティーをサポートする者も皆、ボランティア(卒塾生)です。そのような問題を抱えつつ場所探しを続け、ようやく今日のこの会場のオーナーに、我々の考えをご理解いただき、普段カフェレストランとして営業しているこの場を、我々のために開放していただくことが可能になったのです。オーナーには感謝の念が耐えません。」

塾生  「最後に、今後の抱負を聞かせていただけないでしょうか。」

 安会長 「今回のように、チャリティー的な、またボランティア的な要素をもった活動というものは、基本的に、利益うんぬん、採算うんぬんといったようなものではありません。立場を超え、年齢を超え、しがらみを越えて、皆で一緒に何かをするということに意義があるのです。機会の学塾同窓会には、様々なメンバーがいます。博士もいれば、主婦もいます。20代の青年もいれば、40代の壮年もいます。これは区別のない集団といえるでしょう。皆がそれぞれに“他人のために”という精神を忘れず、人を区別することなく、一緒に何かをする時、それは大きなうねりとなって、世に噴出すことでしょう。これからもがんばります。」

塾生  「ありがとうございました。」

今回の訪韓は、私にとって今までにない収穫があったように思う。誰しも何かしらの行動を起こすにあたり、様々な物が意識の中に飛び込んでくるのだが、それらを表面しか見ようとしなければ、それらは己に何も語りかけてはこないというのは世の常であろう。当然ながら、私にとってもそれは言えることで、起こる事象に対し、しっかりと見、聞く姿勢が己になければ、そこには何も生まれない。そういう意味で、今回の訪韓は、『自分のスタンス(あり方)』というものを再度見直すことができた点を以って、収穫と考える。つまりは『聞く姿勢の重要性』であろうか。

 余談だが、今回のビアパーティーに参加したお客さんの数は、のべ1000人を超えたそうである

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