韓国のボランティア団体との交流
四国政経塾  桐内 直美
 4月20日、松山空港発の飛行機に乗って、ソウル経由で釜山に入りました。私にとって、今回が、初めての外国旅行です。釜山への道中、言葉が通じない不自由さを考えていると、段々この旅が不安に思えてきました。
 実は、今回の韓国への旅は、観光目的の旅行ではありませんでした。半年くらい前に、四国政経塾の準備会合に、当時、松下政経塾の関係で、日本に滞在していた韓国の方をお迎えしたことがあったのですが、その方から「木曜学術会」という釜山市の権威のある団体が、松下政経塾や四国政経塾について強く関心を持っているので、是非釜山に来て、話をしてくれないかとの熱心なお誘いを受けて、大和田塾頭と共に旅立ったというわけです。
 釜山に着くと、ホテルに入り、その足で「木曜学術会」のメンバーの待つ会場へと向かいました。会場について入口を見ると、そこには私たちへの歓迎の意を示す大きな垂れ幕が飾られていました。大和田塾頭は、これはとんでもない場違いなところに来てしまったと、一瞬躊躇した風でしたが、会場から学術会のメンバーの人達が出てきて、大変な歓迎を受ける中で、これはもう退くことは出来ないと、意を決して会に臨んだ様でした。
 「木曜学術会」のメンバー構成は、大学教授36人、医師6人、マスコミ関係8人、弁護士3人、企業人40人、公務員3人等、約90名程のメンバーです。その中で、今回の会場に出席されていたのが、20名程でした。会議の始めに、YOO会長から私たちの紹介を受け、四国政経塾の今までの経緯を話して欲しいということで、大和田塾頭が、講演を行いました。塾頭は、今までの準備委員会の経過を話し、それから、四国政経塾の基本理念として、少し前に開催した高松大会で決まった、"人と人との出会いを大切にし、四国全島に おいて、人と人との有効なネットワーク(人の輪)を作っていく"ということについて、説明をしました。つまり、1人の考えよりも2人の考え、1グループの考えよりも多くのグループの考えを聞き、行動する事によって、全員1人ひとりが成長し、その人達の力を合わせた取り組みによって、より良い地域を作っていけるという考え方です。四国政経塾は、産声をあげたばかりでまだまだ具体的な活動となると、これからの話ですが、私達は、こんな基本的な考え方を胸に、手探りで動き始めたところです。
 その後、私達も「木曜学術会」の人達の話を聞き、韓国や韓国人に対して、今までの固定観念に捕らわれていた目から鱗が落ちるような気持ちになりました。人間教育について話をしている中では、松下政経塾副塾長の上甲先生のお話を引用させていただき、人間として立派な人は「自分の利益を越えて、全体の利益を常に考えられる人」「人はともかく自分さえ、と考えるのではなく、皆が幸せになることが自分の幸せと考えられる人」と語り、全体の利益の増進を作っていくことが、結局は、自分の利益や幸せにつながってくるというお話をしました。つまり、1人だけ幸せになったり、金持ちになっても、回りが不幸だったり貧乏だと、本当の幸せが来ない。戦後、日本という国が豊かになり、日本人の大多数が幸せだと感じられる国になったのは、日本の1企業でなく、日本全体の企業が共に伸びようとしたからだし、日本人1人でなく、日本人全体が豊かになるよう、国民全体が努力をしたからでしょう。これが、日本の1企業だけが豊かだったり、1個人だけが豊かであることを目指してきていたならば、今の日本は、貧富の差の激しい国になり、恐らくまだ発展途上国に止まっていたのではないでしょうか。言い換えれば、人間として立派であることは、常に回りのことを考え、今自分が何をしたら回りの人が助かり自分も助かるかということを考えながら行動するという事です。しかし、今の日本には、単に考える人や雄弁な人は数多くいますが、行動できる人は少数であるということが残念です。私達は、行動する事によってこそ、全体が幸せになり、自分も幸せになるはずです。四国政経塾では、この全体の利益や周辺の人を幸せにする行動ということを重視した取り組みを進めていこうと考えています。
 次に、自分達の活動を通して青少年を支援していこうという話題の中では、日本からビデオを2本持って行き、日本の祭り(三島祭り)のビデオを見て、今までに三島各地で行われていた祭りを、大和田塾頭が、青少年の意見を聞きながら、いかにして行政を動かして、統合寄せを実現したかについて話しました。
 その後、会場を移して、懇親会となりました。この中で「木曜学術会」の人は「日本人というのは、内向的の人間であって、外向的の人間ではない」とばかり思っていたけれど、大和田塾頭の話を聞いてみると、自分達の考えを直さなければならないと、言ってくれましたつまり、多くの韓国の人達は、日本人というのは、自分の事だけ、日本の事だけ良かったらいいと思っている民族だと考えているらしいのです。私達は、国と国の間にギャップということについて、色々と考えさせられました。
 こうして2時間ほど懇親会をした中で、最後に今後四国政経塾と「木曜学術会」との間で交流を続けていくことをお互いに確認し合いました。更に「木曜学術会」の方からは、韓国人の反日感情が、今とても強いので、日本人というものをもっと広く理解していくために、小学生同志の国際交流を並行して行きたいと意見が出て、大和田塾頭が、一度帰国して、行政並びに四国政経塾の皆さんと相談をして返事をすることになりました。尚、大和田塾頭から「木曜学術会」の方に、10月には、是非ビデオで見て頂いた、伊予三島の祭りを見に来てほしいと要請したところ、必ず10月には、四国に来て、四国政経塾の皆様と意見交換をしたいとの返事がありました。 韓国の人達とはほんの短い時間の交流でしたが、今回「木曜学術会」と四国政経塾との交流の種蒔きが出来たことが、大きな成果が残せた旅であったと思います。
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